マッチング事例 CASE.46株式会社田村紙店
- 副業
- 週1副社長プロジェクト
1931年、鳥取名産品の果実袋の販売を主軸に創業し、現在に至るまで紙の販売、紙加工品の提案を行う。生活に欠かすことのできない紙販売を通し、紙文化の継承と発展に貢献。また素材卸業だけでなく、それ以上の付加価値創造と提供を目指し、顧客満足度の向上に努める100年企業を目指し「時代に合わせて柔軟に進化すること」を理念に事業を継続している。
4代90年続く事業の転換期への経営助言
副業社員を募集したきっかけを教えてください
2020年に一度、人事考課の構築をテーマとしてとっとり副業・兼業プロジェクトを活用しました。それがうまくマッチングして、社内に良い効果をもたらし、現在きちんと運用できていることから再度活用したいと考えました。
前回から2年以上が経ち、現在は私が当社の代表となりましたが、普段の業務もこなしながら経営をしており、これから勉強していく状態です。ぜひ第三者の方に当社全体を見ていただき、「環境・時代に適合した経営の効率化および柔軟な対応を行う」ことをテーマにした経営全体のアドバイスをお願いしたいと思い、今回も副業社員にお願いすることにしました。
時代のニーズと環境に合った事業継続を目指して
その副業社員に決めた理由は
関東圏にお住まいの30代の男性です。出版社にお勤めの方で、中小企業診断士として当社のような規模の経営課題へ助言を行う経験があり、紙と縁の深い出版業界での経験・実績があることから、ぜひお願いしたいと思いました。新型コロナウイルス情勢下に入ってから、紙のニーズも変化し、デジタル隆盛の世の中ですので、紙の製造・販売も転換期を迎えています。そういった背景も含め、副業社員は環境や時代に合った経営、その経営の効率化についてご相談できる広い視野を持っていることも決め手でした。
社内の風潮と経営に一石を投じる
具体的な業務内容とその成果を教えてください
上の世代が認めた人事考課制度の風潮
2020年のマッチングにおける取り組みについてですが、当時は小規模・少人数の会社ということもあり、人事の評価や査定が曖昧で手が回っていませんでした。そこを副業社員に相談し、テスト期間を経て、2022年に正式にその人事考課の運用を始めました。それまで数十年と勤めてくれた従業員が、目標を立て、会社側がそれを評価するというやり方にするのは、少々恐れていたところでした。
しかし、意外にも最も長く勤めている課長が「ぜひやるべきだ、個人が目標を持つのが当たり前だ」と後押ししてくれました。その意見がほかの社員にも広がり、当たり前だという風潮ができたのは当社としてはかなりの前進でした。あとは評価を出す人間が、きちんと社員の目標を設定し、理解すること、正しく評価することを今後も続けていきたいです。
紙業界の産業を見据えた経営計画
副業社員と一緒に、社の全体的な経営計画を具体化していっているところです。詳しい経営計画構築のノウハウがなかったのですが、指標になるものを出して取り組みたいと思っていました。周知のとおり、現代は印刷や紙業界は右肩上がりの産業とは言えなくなっています。まずは当社の事業に興味を持っていただき、この企業に任せれば安心だと思っていただける体制を作りたいと思っていました。
紙の事業で作家や若い世代を応援
中小企業診断士である副業社員は、経営計画に関してプロフェッショナルな方で、私の考えていることに対し、やるべきことや売り上げの立て方を明確にしてくれました。電子化が進む昨今、残る紙媒体もあります。特に書籍の装丁周りで使われるようなクリエイティブな紙、雰囲気や温かみを伝える紙は残っていくだろうと言われています。
そうした紙を作り、県内でクリエイティブな仕事をしている方を応援できる体制を整えたいというアイデアも出ました。クリエイターがデザインを起こし、当社がその表現を応援し柔軟に印刷や紙加工をしてはどうかと。学校もタブレット学習が普及しつつありますが、学生さんに紙に触れる機会を持ってほしいと思い、学校へ出向くイベントの計画なども視野に入れています。
副業社員がもたらした効果は
社員モチベーションがアップしたこと、社内の風潮や雰囲気が変わったことです。当初、副業社員には経営計画の構築ではなく、経営全体のアドバイスをお願いするつもりでした。決算書を見て色々教えてほしいというような、ざっくりとした内容をイメージしていました。しかし、副業社員はそれをもとに色々ヒアリングを実施し、やるべきことを提案、具現化してくれました。私としては、副業社員という自分が頼ることの出来る存在ができたことは大変大きなポイントです。「困ったら相談したい」と考えられるようになり、気持ちに余裕ができました。
紙文化の継承と地域貢献できる事業を継続
今後、会社としてどのように成長していきたいですか
地方から紙の需要を底上げし経済発展につなげていきたいと考えています。紙離れが叫ばれている世の中ではありますが、弊社と何十年も取引しているお客様もいます。ニーズの変化を捉えながら、継続的に安定供給するのが重要だと考えているので、そのためにも需要を拡大するための取り組みを今後も続けていきます。また引き続き、後世にも残る紙を世に出していくことにこだわり続けたいです。クリエイティブな紙を作って作家を応援し、若い世代にも紙に触れていただくという、紙文化の継承も忘れずに続けていくことにもこだわっていきたいと考えています。
まだ副業社員を活用したことのない企業に向けてメッセージをお願いします
前回も今回も、当事業を活用する際は最も多忙な時期で、当初「大変かな、でも1回やってみようかな」という気持ちでした。それがいざ活用してみると、ずいぶんと前のめりになり、副業社員の話をたくさん聞くことができ、大変勉強になりました。また、会社の改善点だけでなく、改めて良いところもたくさん見つけることができ、社内では気づけなかった事業の可能性を広げることもできました。これは副業社員が自社の規模に合わせた目線で話をしてくれるからだと思います。
経営者にとっても副業社員は深いところまで関わってくれて、頼れる相談相手になってくれます。鳥取県がバックアップしてくれるので信頼できますし、コストもそこまでかからないのもメリットです。それだけでやってみる価値は十分ありますし、当社も楽しく仕事ができました。