創業より20年、電気・通信のライフラインに携わる幅広い工事を行う。先の見えない時代を生き抜くために、経済発展のみならず、家族や地域との人間関係を大切にし、「家族とご飯を食べよう」をキャッチコピーに、住み慣れた地域で、無事故で安全に作業し利益を出し続けることを目指す。

自社の課題を、社内にない専門性で解決する

副業社員を募集したきっかけと当時の経営課題は何ですか

 商工会議所のチラシなどを見かけた時点で気になっていた矢先に、「とっとりプロフェショナル人材戦略拠点」の方に今回の取り組みをご案内いただいたことがきっかけです。私は先代の代表から引き継いで2年目になりますが、事業をさらに展開していくために新規事業の立ち上げを検討していました。それ以外にも、人事戦略に十分時間が割けていないこと、企業としての強みを言語化して社内外へPRすることに課題を感じていました。何か行動に移さなければと思いながらも、やることが山積みで取り組めていない状況でした。ただ当社の規模感では業務量を考えたところ、正社員として専任の担当者を採用することは検討していなかったため、副業として関わっていただける距離感が望ましいと思い募集を開始しました。

 

3つの課題を、4名の副業社員と共に 

人材を募集してみてどのような反応がありましたか

 「新規事業立案」「人事評価制度」「企業ブランディング」の3案件で募集を行いました。1案件に対して15人から20人程度の応募があり、その反響にかなり驚きました。応募者の数は言うまでもなく、その質の高さにも驚きました。応募書類はすべて目を通し、その中で特に気になる副業社員々を各案件3~5名ほどまで絞ったうえで面談を行いました。経歴が優秀で熱意のある方ばかりで選考に迷いましたが、3案件の応募者から「事業戦略」を担う人材も採用し、最終的に4名の方々と契約をしました。

 

その副業社員と契約した決め手を教えてください     

 応募者の経歴や実績はもちろんですが、副業社員の熱意やモチベーションも決め手でした。具体的にはご家族が鳥取県出身で、ゆかりのある鳥取に貢献したい方や、鳥取県に直接的な縁がない方でも副業で実力を試したい方。中には国内で有名な大手企業で働かれていて、通常に依頼したら数百万かかってしまうような経歴の方も。こちらのニーズと副業社員の想いが十分すぎるくらいマッチしている、と感じたことが決め手となりました。また、年齢的に自分と近いというところもフィーリングが合った要素だと思います。

副業社員が明確にしてくれた課題・そして強み

具体的な業務内容とその成果を教えてください

グループワークで強みを明確化

 「企業ブランディング」をお願いした副業社員には、当社の強みは何か、それを生かしてどのような方向に進んでいけばいいかを明確化していただきました。社員を巻き込んでグループワークを行い、会社のよいところや提供している価値などを、役員含めリーダー以上の社員と話す場を設けました。どうしても現場仕事の毎日なので、なかなかこのような機会を持つことができなかったので、副業社員にずいぶんとお力添えをいただき、当社のキャッチコピーもご提案いただきました。またうまく社員から話を引き出していただくことで、活発に議論ができ、最近話題のSDGsなどもそうですが、社会的な要請に企業が答えないといけないということを気づかせていただきました。

     

社員全員と面談し企業内の声を抽出

 「人事評価制度」では、副業社員から「ぜひ社員の方全員とお話ししたいです」と申し出があったため、お願いすることにしました。1か月弱というタイトな期間にも関わらず、19名と各40分程度面談し、それをレポート、分析していただきました。その後に会社の良い点、悪い点を抽出したうえで「こういう人事評価制度にしてみてはどうか」と具体案をいただきました。人事評価制度の構築には社員がどう考えているかを理解する重要性を知ると同時に、社内の状況を可視化できたのは大きな成果でした。社員の間でも副業社員はとても話しやすい方だったと好評でした。

 

10年先を見据えた経営体制の明示

 「事業戦略」では、経営者として、5年、10年先の会社の数字をどう計画し体制を整えていくかをベースに、営戦略や事業の考え方、数字の捉え方というものを具体的に教えて     いただきました。先代から引き継いだ事業を継続し、従業員を守っていく、今後の方針がある程度整理できたことは非常に大きかったです。

 

副業社員がもたらした効果はどのようなものがありましたか

副業社員と共に課題解決に取り組み、自分たちの仕事が誇らしいというイメージを言語化することで、お客様とのコミュニケーションの質が上がってきた実感しています。私たちの会社の課題を直接的に解決いただいているのはもちろんのこと、副次的な効果があったことが大変嬉かったです。

今後、会社としてどのように成長していきたいですか     

 今回明確にした強みを社内ではしっかり認識し、言うだけではなく、社員含めて実行すること。社外にもPRすることで共感を集めて当社のファンを作っていくこと。以上を持って、この変化の時代にお客様から、少子化の時代に採用応募者に選んでいただけること。しっかりと企業としての足場を固めることが大切だと感じています。また、「新規事業立案」でマッチングした副業社員と進める新規事業も形にしていきたいと考えています。お互いに気持ちよく取り組めているので、良いものができそうです。

 

まだ副業社員を活用したことのない企業に向けてメッセージをお願いします

 中小企業は、大企業のように人的リソースがなく、うまく解決できない様々な問題があります。人事評価制度がない、就業規則が不十分、優秀な社員が辞める、ホームページが整っていないなど、様々な課題をコスト面、人材面で諦めてしまっている経営者は少なくないと感じています。

 頭の片隅に漠然とあるけれど取り組めていない、そういった経営者の悩みに対して向き合うチャンスであり、副業社員は経営者の良き相談相手となってくれるこのプロジェクトは素晴らしい仕組みです。これまで関わってくださった副業社員々との経験を糧として、今後の事業に活かしながら取り組んでいきたいと思います。