マッチング事例 CASE.33泊綜合食品株式会社
- 副業
- 大企業連携
昭和49年の創業以来、漬け物を主とした食品加工・製造業を展開。自社らっきょう農場による、栽培・製造・販売と一貫した管理を徹底。青果だけではなく、加工することで全国に卸している。自社の通販「とまりのつけもの」や各店舗を通じて、鳥取で育ったらっきょうの漬け物を販売。
綜合食品会社としての自信と可能性に気づく
副業社員を募集したきっかけを教えてください
当社の課題として、らっきょうという食品だけでなく、らっきょうをイメージに使った雑貨などの展開を具現化したいと思っていました。また当社の食品に関して、実際には卸先の要望でらっきょう以外の商品も製造することもあり、その際に会社の表現をどうすべきか、ブランディングをどう強化すべきなのかというところも悩みで、広報のしかたを一度整理する必要がありました。そこで「商品開発」「企業ブランディング戦略」との両面で外部の人材を起用することを検討し、この副業社員マッチングを利用することになりました。
優秀人材およそ120名の反響を呼ぶ
副業社員を募集してみてどのような反応がありましたか
「商品開発」に関して副業社員の募集をしたのは2020年度です。なんとこのときは120名ほどの応募があり、その想像以上の多さに驚きました。応募者のPRも、海外展開に強い方だったり、マーケティングに特化している方だったり、本当に多岐に渡り、応募者情報に目を通す時点で「なるほど、そういう視点があるのか」と大変勉強になりました。エントリーの情報で絞らせていただき、20名ぐらいと面談し、採用者が決まりました。
その副業社員に決めた理由は
「商品開発」の副業社員は、50代の女性とマッチングしました。広報・マーケティングの部長職の方で、長く商品開発に携わり、商品の企画から販売までを手がけた経験が豊富でした。マッチングの決め手となったのは、面談の時点で新しい商品展開のご提案をいただいたことです。それが大げさすぎず、リアルにすぐ商品化できそうな具体的なお話で、この方とならチャレンジできるのではと思えました。その方の人脈も素晴らしく、私たちとはまったく接点のない業界にも開拓していけそうな魅力を感じました。「企業ブランディング戦略」の副業社員は2022年の10月頃にご縁がありました。この方も50代の部長職の女性です。こちらは広く募集したのではなく、とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点主催の取り組みで大手の生活用品メーカーが県内に見学に来ていた際に知り合いました。助言やご指摘が的確でアイデアも豊富、会社経営の経験もあるということで社長の立場もわかるというのが心強いところでした。
社員の心をつかむ副業社員が示した光明
具体的な業務内容とその成果を教えてください
オンラインから来社での話し合いで活性化
当初、オンラインで相談していましたが、実際の商品を見ながら、私との面談に加え、社員も交ぜた話し合いを重ね、社員が副業社員に相談することもあり、社全体で副業社員と関わっていました。そうして話し合いも活発化し、とても1日では足りないとまでになり、副業社員からの提案で、2泊3日くらいで当社に来ていただきました。
他県への販路開拓で商品の可能性が広がる
「商品開発」の副業社員は東京の方ですが、副業で静岡のお仕事をしている関係で静岡県に繋がりがあり、そこでの今までにない商品化の話を持ってきてくださいました。らっきょうに関連した商品だけではなく、鳥取県内では加工してもらえる企業がなく商品化に至らなかったものが、静岡の企業と繋げていただくことで商品化のアイデアをいただきました。
これは社内もすごく影響を受けて「実はこういうの作ってみたかった」とか「このルートでできないか」などの声が上がり、結果として漬け物以外の商品の流通営業ルートができて、売り上げの幅が広がりました。私も副業社員について静岡までお伺いすることもあります。地方にいながら首都圏をはじめ他県での商品開発開拓のきっかけを頂けるのも副業社員ならではだと思います。
会社の実態に合うマネジメントを提案
「企業ブランディング戦略」の副業社員は今年1月から開始してまもないですが、初日から積極的に社員と1対1で話してくださり、いきなり社員が心をつかまれたような感じで、人生、会社、仕事への意識が社内全体で変わったように感じています。当社は小さな会社ですので、外部の方からのこうした刺激は本当に新鮮でした。
副業社員は大企業でのマネジメント経験が豊富で、人の心のケアの仕方も大変勉強になります。私自身がマネジメントをする際に、「こういうところに気を配るとよい」というお話や「この社員はこういうところを伸ばしてあげるとよい」というお話まで、具体的な助言をいただいています。ビジョンやミッションを具体的に描けても、社内の実態に合っていないといけません。そこを副業社員に学ばせていただきましたし、社員も話をすることで得るものがあるようです。
副業社員がもたらした効果は
まず社全体の意識が大きく変わりました。漬け物という商品がこれまでの主力であっても、当社は「総合食品会社」であると社員が意識するようになりました。新しい分野の商品を売ってみたい、こういった商品にチャレンジしたいという声が多く上がり、社員にもモチベーションを与えてくれました。
小さい会社で長く事業を継続していると、会社に対して新鮮味を感じなくなることもあります。つい社員に甘えてしまったり、社員も会社に対して倦怠感を覚えてしまったり。そこを副業社員に風通しをよくしていただき、会社全体の刺激にもなりました。
歴史的価値のある伝統食品をつくる矜持
今後、会社としてどのように成長していきたいですか
当社が作っているのは漬け物という伝統的文化の食物です。もっと文化的、歴史的価値がある、そういうものを私たちは扱っているということを伝え、社員にも誇りに思ってほしいです。そのために私たちももっと学ばないといけません。卸売りで商品を流すだけではなく、生産者の声や工夫も流通に乗せられるような仕組みづくりをしていきたいです。伝統的な食べ物は、周囲に興味をもっていただかないと食べる機会が減ってしまいます。
放っておいて広がるものではないので、伝統的な食文化の意味や理解を広げていかないと市場の拡大にはなりません。それが売り上げに繋がります。副業社員のおかげで社員が今すごく楽しそうに仕事ができていますので、今後もこのモチベーションを継続して事業を展開していきたいです。
まだ副業社員を活用したことのない企業に向けてメッセージをお願いします
始める前は、全く関係のない業種の人に頼るのが、まさにコンサルティングのようでハードルが高いものでした。しかし外からの目線で、第三者の目線だからこそ見えるアドバイスをいただけるのはプラスになります。社内の人間や同業者に相談するのとは全く異なりますし、特に経営者は気軽に相談できるパートナーがいないこともあります。コンサルティングは専門色が強いものですが、この副業社員のように商品や経営面、マネージメントなど、多岐にわたり人として相談できる相手はとても大切です。
商品の企画にしても作って終わりでなく、その後の展開を伴走いただけるが心強いです。地方にいながらも、そうしたコミュニケーションを取ることができるので、当事業を利用してよかったと思っています。