創業33年の豆腐製造業者。芦津の山深い石清水を始め、水と森の豊かな街である智頭町の恩恵を受け、日々お豆腐作りに邁進。「お客様に感動していただくお豆腐作り」にこだわり、今までになかったお豆腐ギフトなども開発・販売。豆腐文化を踏まえて、さらに美味しい豆腐を極めるべく、全ての素材において想いやこだわりを込める。

新商品開発と動画を活かしたPRで販路の開拓

副業社員を募集したきっかけを教えてください

 昨年、智頭町の役場の方から、副業社員を活用する仕組みがあるので、興味があれば活用しませんかという話をいただいて、この取り組みを知りました。豆腐の需要が減少傾向にある中で、事業を継続するため、豆乳を使った商品開発ができないかといった内容で補助金を申請しどう進めるかと考えていたタイミングだったので、ぜひ利用したいと考えました。

 

 課題は、発芽豆乳を使った新商品の動画による広報でした。他社製品の豆腐と比べてより付加価値があることを訴求していくPR動画の作成すること、YouTubeなどの動画配信やSNSを利用した周知をしていくことを考えていました。動画の撮影や編集などは当社で行っていきますが、昨今のインターネット戦略も踏まえ、効果的な動画の活用方法や撮影方法などについてアドバイスをいただける方を探していました。

ゼロからの立案実績を持つ経験者の選定

副業社員を募集してみてどのような反応がありましたか

 今回、副業社員を募集してすぐに15件ほどの応募がありました。それほど反響が大きく、応募者の経歴も優秀な方ばかり。得意分野、スキル、これまでの実績などから慎重に検討して絞り込み、2名面談をして、マッチングに至りました。どちら大手企業に勤めてマーケティングで貴重な経験をされてきた方で、ブランディングや広報活動に大変詳しかったです。当社が求めていたのは、広報の知識もさながら、市場開拓や販路の話ができる人でしたので、まさにそういった人財との縁につながったことが大変ありがたかったです。

 

その副業社員に決めた理由は

最終的にマッチングした副業社員は大手企業での経験を有した30代の男性です。ECサイトのプロフェッショナルで、WEBでの販促やサイトデザインなどにも強い方でした。当社が近々豆腐や豆乳を使ったスイーツを展開する予定でもあったので、スイーツショップの市場開拓の経験があることも魅力でした。また更に決め手となったのは、副業社員がゼロの状態からひとつのプロジェクトを一から立ち上げた経験をもっていたことです。我々もゼロからのスタートということで、一緒にやってくれることが心強く感じました。

 

これまでにない商品企画・立案と市場対策      

具体的な業務内容とその成果を教えてください

密度の濃いワークショップで具現化に加速

副業社員とは月に2回ほど1時間オンラインで面談をする形式で進めてきました。面談前にメールなどで内容を共有しておき、それについて詳しく詰めていく流れです。特に、当社社員へ向けたワークショップを3回ほど実施し、この効果が特に大きいと感じています。アイディアもワークショップでどんどん出していき、1回ごとのワークショップは非常に内容が濃く、この半年くらいでほぼ形が出来上がってきています。

 

ターゲット層を意識したブランド名の提案

新商品は大豆を発芽させ、GABA(ガンマ・アミノ酪酸)を含み、神経を落ち着け睡眠の質を整える効果があります。食物繊維も豊富にした豆腐にしようということで、ターゲット層もかなり具体的に絞り込んでいます。副業社員には、新商品を首都圏中心に販路開拓するため、これまでにない商品名の考案、販売するための商品のプレスリリースまでを形にしていただきました。販売先もいくつか決定し、おおよそ半年くらいの時間を費やして実現できています。

 

動画は売上アップではなく販促活用

YouTube発信についても専門の方をご紹介いただき、副業社員と社内でコンテンツの吟味や意見交換を活発に交わしました。YouTubeは作成すれば販売向上につながるというものではありませんし、誰にどういった情報を届けるのかというところを踏まえ、YouTubeの対策を具現化していっており、訴求すべきところに活用すべく動いています。

 

副業社員がもたらした効果はどのようなものでしたか

副業社員は何よりも、アイディアを出すことそのものだけではなく、アイディアを引き出すための、集団での発想や立案が巧みだと実感しました。ロゴ開発の際も、ディスカッションを経て、当社のメンバーからは思いもよらない発想を引き出してもらいました。副業社員がそうしたアイディアを集約して、さらに良いものを提案する。企画しているスイーツの店舗名などもこうして決まりました。私たちがワークショップをするとなると、集まってただ話をするだけとなってしまうのですが、副業社員は新商品開発や販路開拓・拡大のプロとしての意見をくれました。これは当社にとって大変な刺激になり、ワークショップの後も、社内での意見交換が活発になっています。

自社の構想と方針を把握し、専門家に助言を依頼 

今後、会社としてどのように成長していきたいですか

近い将来の明確なステップとして、スイーツ直営店をオープン予定です。前々から構想していたことですが、副業社員との縁で大きく進みました。豆乳やおからなどを使ったプリン、焼き菓子など、できたてを販売できるお店にして、近隣のお店に来た方々に寄っていただけるような場にできればと思っています。副業社員もスイーツショップでの販路開拓の経験があり、この計画に尽力いただきました。商品やメニューの企画・開発、PRなどがこの数か月で形になり、副業社員に教わったことを自分たちで取り組んでいくことが目標です。

 

まだ副業社員を活用したことのない企業に向けてメッセージをお願いします

副業社員の活用は本当に画期的で、自社で解決できないところを専門の方に相談し、他県の方の目でご意見やサポートをいただけるところは本当に素晴らしい取り組みです。この取り組みを利用するのであれば、まず自社の構想があるというのが大前提です。こういうことをしたいけれど、ここが苦手だから、ここに特化して得意な方がいないか、ということを明確にすることがとても重要だと感じました。構想がまったく決まっていないのに助言だけを求めていたら、おそらく望む結果にはならなかったと思います。第三者目線で自社の強みを明示し、強化を促せる視点を持つ方とマッチングできれば、事業のさらなる飛躍に大いに役立つと思います。