鳥取県米子市のIT企業として、ネットワーク機器の販売、自社ITサービスの開発・販売をメインに手掛ける。2020年にサービスインしたクラウドPBXは市場で多くの注目を集め、現在は新商品開発に注力中。更なる事業拡大を目指し、副業人材を活用した新たなプロジェクトチームの編成にも着手している。

事業投資のしやすさと新しい発想に惹かれて

副業人材を募集された背景を教えてください

 当社が副業人材を募集したのは2021年5月末。当時は代表である私自ら、損益分岐点の調査や資料作成などのマーケティング業務を、経営のかたわらで担っている状況でした。経営に注力できる時間が削られる中、その業務を任せられる人材が社内にいない。育成する時間もない。どうしたものかと思い悩んでいた時に、今回のプロジェクトに出会いました。

 

副業人材を活用された理由を教えて下さい

 理由は二つあり、一つは事業投資のしやすさです。マーケティング領域は、事業運営に不可欠ですが、収益へと転換するには相当な時間を要します。すぐに成果が見込めないため、多額を投資できる領域でないとの判断で、これまで人材確保に二の足を踏んでいたのですが、副業人材であれば月に3万円の報酬で経験者を活用できる。一般的な中途採用にはない事業投資のしやすさは、魅力的でした。

 

 もう一つは、今後全国的なシェアを確保するためには、新しい発想を持った人材が不可欠だと考えていたことです。正社員で募集を掛けようとすると、どうしても応募者の経歴は似通ってしまいますから。副業人材であれば、基本的にはリモートワークで全国に向けた募集なので、ユニークな経歴をお持ちの方と出会えるかもしれないとの期待もあり、副業人材を活用してみようと決めました。

 

お任せしたい業務に、お二人はぴったりだった

募集した時の状況や選考はいかがでしたか

 応募者は15名。キー局にお勤めの方や某有名ゲーム機の開発に携わっていた方など、多種多様な経歴の方々からご応募いただきました。結果、2名と契約をしました。お二人とも、当社が求めるBtoBマーケティングの知見と新サービスのマーケティング経験をお持ちであったこと。また、募集した業務内容とのマッチ度の高さも、選考の決め手になりました。

 

 今回の取材に参加していだいている藤本さんは、前職で主に医療施設に向けたシステム販売とマネジメントを担当されており、当社が商品開発を進めている「医療向けクラウドPBX」と経歴が合致。迷いなく一緒に働きたい、と思いました。もう1名の方は、現在経営コンサル事業で、多くの上場企業、中小企業、スタートアップ企業を担当されています。過去には、10年間某総合商社で、新規事業開発とベンチャー投資事業に携わり、シリコンバレーでの勤務経験もお持ちでした。この方であれば、切り分けしたかった損益分岐点の調査をはじめ、新事業に向けた相談もできるのではないかと考え、契約をしようと決めました。

 

経営に注力できる時間が増えた

副業人材の方とは、どのようにプロジェクトを進めましたか

 1人目の方には、主に医療向けクラウドPBXの拡販に向け、山陰地区にどういった医療法人があるかといったデータの収集、分析業務をお任せしました。2人目の方には、2020年に開発したクラウドPBXをサブスクリプション型で拡販するにあたっての注意点や事業戦略のベースとなる資料作成をお任せしました。具体的には、サブスクリプション型でサービスを提供する際には、どれくらいの価格が最適かといった損益分岐点の計算や、直販と代理店向けの効果的な販売戦略などについて、分かりやすく資料にまとめていただきました。前職で、大きなビジネスに携われていた方だったので、提案力の高さには驚きました。また、金融機関向けの資料の作り方が抜群に上手でした。これ以上ないほど細かいバッグデータをベースにした資料なので、金融機関の信頼を得やすく、今後の資料作成の勉強にもなりました。

 

副業人材と働いてみた率直な感想を教えてください

 副業人材を活用してよかった点は、やはり経営者としての時間を確保できる点です。一度副業人材に販売店向けのウェビナー資料を作ってもらったことがありますが、もし私が同じ質と量のものを作るとしたら1日はかかっていたかと。経営に集中できる時間を得られるのは、活用する大きなメリットだと思います。

 

新規事業の推進に、副業人材の活用は不可欠

今後の事業ビジョンがあれば、ご紹介いただけますか

 医療向けクラウドPBXは現在開発中で、年内のサービスインを予定しています。現在は実証実験の段階ですが、多くの病院様から「いつ頃、商品ができますか?」「試作品でもいいから、導入してほしい」といった問い合わせや要望を数多くいただいているところです。こうした市場ニーズに応えるためにも、マーケティング領域と平行しながら、医療向けクラウドPBXの開発に力を入れたいと考えています。

 

副業人材の活用を迷われている方に向けて、アドバイスをお願いします

 実は、医療向けクラウドPBXの他にも、新しいビジネスの素案はたくさんあります。詳細は明かせませんが、行政サービス向けの新商品開発もその一つです。事業ビジョンの実現には、多様なIT言語を持つプログラマーやSEが必要になるため、今後とも副業人材を積極的に活用していきたいと考えています。副業人材の活用では想像以上に高い費用対効果を得られることが、今回の活用を通してわかりました。当社と同じような中小規模のIT企業には、ぜひおススメです。

 

副業人材の藤本さんにもお話を伺いました

今回のプロジェクトへの参画を決めた背景を教えてください

 私は前職で医療施設に向けたシステム販売とマネジメントを行っていたのですが、鳥取県米子市は担当エリアの一つでした。募集プロジェクトは、米子市に本社を置くIT企業でのクラウドPBXの販路拡大に向けたアドバイスといった内容で、前職との共通点が多く、興味を惹かれて応募を決意しました。その後、面談に進んだところ代表より「実はこれから、医療向けクラウドPBXの開発を予定している」とのお話があり、私の得意領域と完璧に合致していたので面談は大盛り上がり。プロジェクトへの参画はすぐに決まりました。

 

担当したプロジェクトについて教えてください

 私は計2回、プロジェクトに参画しています。1回目は昨年6月から8月の期間で、主に拡販ポテンシャルのあるターゲット先を選定するためのリスト作成に携わりました。山陰地区のエリア別に、大病院と中小規模の病院、クリニックがどの程度あるか、事業ポテンシャルと併せて資料にまとめる仕事です。社長は今、そのリストをベースにターゲット先を選定しているところです。代表からお話があった通り、医療向けクラウドPBXについては、実証実験の段階ながら多く病院様から問い合わせをいただいているんです。商品自体に強みがあるので、リリースすれば一気に市場シェアを獲得できるのではないかと、一プロジェクトメンバーとしての期待は大きいです。

 

 2回目のプロジェクト期間は、去年11月から今年1月。現在、医療系クラウドPBXとは異なる新サービスのアイディアを社長からお伺いしており、その開発プロジェクトを推進できるチーム編成を任されている最中です。私がプロジェクトマネージャーで、その配下にSEなどのプロジェクトチームが形成されるイメージです。

 

最後に、プロジェクトにかける想いや今後の目標などあれば教えてください

 社長はWebミーティングの度に、新しい事業の構想やアイディアをお話してくれます。とてもやりがいがありますし、なにより一緒にプロジェクトを形にしていくのが楽しいです。本業だと決まった路線があり業務は固定化しがちですが、副業は“自分が思ってもいなかったプロジェクトに携われる刺激がある”と感じています。今後もお互いがwin-winの関係で、プロジェクトを推進できれば嬉しいですし、副業の立場でお手伝いさせていただければと考えています。