カニの水揚げ量日本一を誇る鳥取県境港市で2代続く「カニ専門店」。カニの品質と味にこだわり、創業以来約40年の歴史を持つ「カニのマルツ」として長年に渡り信頼と実績を築く。仕入れから調理、販売まで一気通貫で行い、こどもから大人まで誰もが安心で安全で食べられる美味しさを追求し、すべて無添加にこだわっている。「ゆでがに」として鳥取県認定のHACCPを取得。厳しい基準に沿った衛生管理を徹底。

店頭販売から全国展開を見据えた販路開拓 

副業社員を募集したきっかけを教えてください

 当社は、売り上げの9割近くが店舗に来店するお客様でした。しかしこの数年、新型コロナウイルス情勢下で店舗の営業ができず、対面でお客さんと会うことが難しいこともありました。中長期の経営戦略を考えた時に、今後店舗と同じくらいの販売戦力になるような、第二の柱となる手法を生み出す必要がありました。

 そんな折に、「とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点」より、副業社員を活用する取り組みがあるというお話をいただきました。もともとインターネット上での販売も着手していましたが、このタイミングで、販路開拓やマーケティングに詳しいプロの方にご依頼したいと思いました。

 

具体的にはどういったことを副業社員にお願いしたいと思っていましたか

 大きく分けて、営業企画とオンライン上での販売の二つが課題であり、これまでは観光客の方に来てもらうことを主に考えていましたが、当社から全国へ周知できる営業体制の構築が必要でした。「境港のカニがおいしい」と思っていただく、鳥取の良さを知っていただくために、当社の商品をもっと全国の方々に周知したいという狙いがありました。

 

 また、オンライン販売ではサイトUIの整備が課題としてありました。当社は地元で40年続く企業で、多くの常連様からのお電話でのリピート注文が多かったのですが、今後はオンライン媒体をうまく整備し、お客様と長くつながっていける場を提供したいと考えていました。具体的には、商品のお買い得な情報、新商品の入荷情報など、お客様にもっと身近に感じていただけるやりとりができるようにしたいという想いがありました。

スキルや経験、実績のある優秀人材からの応募が多数

人材を募集してみてどのような反応がありましたか

 「営業企画販路拡大」と「ECサイト」の二つの役割を募集し、それぞれ20~30名くらいの応募がありました。多くの方から関心を持っていただけて、本当に驚きました。「営業企画販路拡大」の方は40~50代で、営業や企画の現場経験がある方などが多かった印象です。「ECサイト」は20~30代の方が多く、店長経験や、自社サイト立ち上げ経験、コンサルティングで売り上げを飛躍的に伸ばした実績のある方など、こちらも多岐に渡りました。

 

その副業社員に決めた理由は

 最終的にはそれぞれ1名ずつマッチングしました。「営業企画販路拡大」は首都圏での営業活動ができる方を希望しており、マッチングした方は、大阪在住で関東への営業活動経験も豊富な方で、まさに私たちが求めるスキルをお持ちでした。食品関連の企業で海外の営業経験もある方で、今後当社も海外への販路拡大も視野に入れていましたので、そういった面も心強いと思いました。「ECサイト」の方はサイト運営の実務経験がある方でした。助言だけでなく運用まで一緒に伴走してほしかったので、お願いしたいなと思いました。ただ、経歴ももちろん大事ですが、面談をしてみてのお人柄が一番の決め手でした。お二方とも「一緒にチャレンジしたい、一緒につくりあげたい」と熱量が高かったのが印象的でした。

業界経験者の専門人材だからできる開拓と指南

具体的な業務内容とその成果を教えてください

首都圏での販路開拓

 副業社員とご一緒して半年くらいが経過しました。徐々に販路の新規開拓をお手伝いしてもらい、現在成果が見え始めています。首都圏をメインに営業や企画をして、すでに何件か販路開拓として提携先を見つけることができました。これまで店頭販売がメインで、毎日仕入れをすれば当然ロスも発生し、冷凍の在庫も負担が増えます。例えばホテルやレストランなどの提携先があれば商品は効率よく卸せます。副業社員の方はこの業界に非常に詳しく、食品の営業経験やご自身の人脈もあり、とても心強い存在でした。

 

食品業界の営業の基礎指南

 当社は営業活動のノウハウが不足していましたので、基本的なところからご指南いただきました。商品企画、企画書の作成、どういった情報が必要かなど、まず食品業界の営業のいろはを教えてもらいました。商品の梱包、パッケージする無延伸シートについてや温度管理など具体的なフォローまでしてもらいました。

 

副業社員がもたらした効果はどのようなものがありましたか

 副業社員を活用し、改めて社外の方と一緒にやることの意義を感じました。当社の知見が足りないところを補填してもらい、たくさん気づきを得ました。実際に副業社員とやり始めて感じたことは、トータルで多岐に渡りなんでもできる人を募集するより、その得意分野に特化してきた方に方針を具現化していただくほうが、より効果的だということです。今後も、まったく別の分野での副業社員の募集や活用を社内で検討しています。

業界の固定概念を払拭し、客観的な目で捉える      

今後、会社としてどのように成長していきたいですか

 当社は現社長が2代目、地元では創業40年を超える企業です。もともと小売業で、家族経営に近いというより、従業員を家族のように感じています。営業や企画、販売スタッフ、ボイル職人など全員で10名ほどの規模です。今回の取り組みをきっかけに、全国の人に知られている会社にしたいというのが大きな目標です。「カニといえばマルツ」と思い出してもらえる企業になりたいと思います。

 

まだ副業社員を活用したことのない企業に向けてメッセージをお願いします

 今までなかったノウハウが得られる、外部の方から客観的な視点で意見がもらえるというところがすごく良いです。私自身も他の仕事をしてからゆくゆく3代目を担う予定で、客観的に見られていると思っていたのですが、経営者は日々の仕事に追われますし、業界の固定観念などもあり客観的に考えられなくなることがあります。

 

 特にこの取り組みは県外の方、鳥取在住じゃない人だからこそ、より鳥取の良さを理解してもらえるのだと実感しました。決して売り上げや業務の数値だけでは測れないメリットがあります。そのうえ、鳥取県の取り組みというのは導入しやすいので、「まずはやってみる」というスタンスが良いと思います。その際は、自社がどんな問題を解決したいのか、何を副業社員にお願いしたいのかを突き詰めることが重要です。