「家族である猫と安心に暮らしたい」そんな愛猫家の想いに応えるべく、猫部屋リフォーム専門店「きじとら」を運営。鳥取県全域と島根県近隣地域を中心に、全国の物件の猫との暮らしを快適にするためのリフォーム・リノベーションを実施。戸建、マンション、アパートなど多くの物件の施工に対応可能で、高齢の職人の雇用増加、若手職人の育成も目標としながら、猫の遊び場を提供している。

新事業で市場拡大。全国の愛猫家に届くWeb集客を目指して

副業社員を募集したきっかけと当時の経営課題はなんでしたか

 もともと、この事業があるということは米子市内ではよく聞いていました。そんな時に、「とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点」の方よりご連絡をいただき、ぜひ話を聞いてみようと思いました。

     飼い猫の頭数も増えてきている世の中ではありますが、猫との暮らしに特化した施工、猫の部屋を作るというのはまだ真新しい取り組みです。地方都市の人口比率では市場は確保出来ない不安の中、目線を広げ日本全国を市場にするべきと思いました。しかし、会社の主体事業は建設業、地元で顔の見える物造りをメインにしておりましたので、日本全国を市場にするためには、Web集客を推進する必要性を感じていました。手探りでWeb集客をしてみましたが、毎月一定の効果を上げるところまで至らず、ノウハウを知りたいと思いました。このプロジェクトは副業としての関わり方なので、そこまで気負わずにお願いできるということ、金額的な面でもチャレンジしやすことが魅力的だと思い、募集を決めました。

 

面談で分かった自社の強み、新たな考え方

副業社員を募集してみてどのような反応がありましたか

 世の中でも類似の事業を行っている企業が少ないこと、また最近ではペットのためのお家というのが、建築や施工の業界でも注目されていることもあり、約20名の方にご応募いただきました。その中からまず4~5人くらいに絞り、オンラインで面談を行い、最終的に1名とマッチングしました。

 また、マッチングに至らなかった方々も面談を通して対話をすることで、経営者として相手の考え方や収益のありかたを分析することもでき、大変有益な時間を過ごすことができました。お断りしたのもこちらのニーズと合致しなかっただけで、みなさん本当によい方々でした。

 

その副業人材の方に決めた理由は

 最終的にマッチングした方は、元大手広告代理店でマーケティングの実績をお持ちの方です。当社がインターネット上で事業を広めていくアドバイスを求めていることを案件に記載していたので、応募者にはメディア関係のプロデューサや雑誌編集者もいました。中には「こちらで御社の情報を掲載しますよ」とご提案してくださる方もいましたが、私たちが求めているのは一時的なメディア露出ではなく、事業全体を広い視野で物事を捉え、当社とは別の視点でのアプローチができる方と対話することで学びを得たいと考えていたからです。マッチングした副業社員は、それがお話の中ににじみ出ていました。得意分野も多く、全体的な目線で物事を考えることができる方で、オンライン上での市場・販路開拓という、今後伸びていくであろう分野の、良きアドバイザーとして関わっていただいています。

 

副業社員が授けてくれる+αの施策

副業社員と仕事をしてみての手応えはいかがですか  

 昨年の7月から副業人材に関わっていただき、当社内で策定した3ヵ年の中長期目標をベースに副業社員人材と協議しながら様々な施策を進めている状況です。過去のデータから毎月の問い合わせ、成約件数を踏まえ、具体的な数値目標や施策、アイデアをいただき、計画を立てることで、この半年間で目標達成までの道筋が立ったという手ごたえを感じています。

 

具体的にどのような業務が進行中ですか

 今話題になっているSDGsに関する情報をWEB広告・自社のHPを中心に意識的に発信を行い、同じ思想を持ったターゲット層からのアクセスを増やすことを念頭に置いています。現在、Yahoo!やGoogleに広告掲載行い、分析することで40代~50代女性からのアクセスが最も高いといった閲覧層の具体的なデータが出てきました。そこからターゲット層をさらに絞り込んで販路開拓していくにはどうしたらよいか。そういった専門的な部分は大手広告代理店での経験がある副業社員に詳しくご提案いただいています。また、最近では社長であり私自身が広告塔になれるよう、面白い動画をSNSで発信しています。

 

学術データに基づいた商品設計のプランニング

 当初想定していたWebマーケティング領域でのご支援はもちろんのこと、ブランディング含めより包括的にアドバイスをしていただいています。学術データに基づいた商品設計のプランニングが必要だということで、教育機関やその他の諸団体で、猫について研究をしている団体へコンタクトを取りました。学術的に確かな裏づけのある、猫の生態に基づいた商品設計を当社製品で訴求することができれば、より信頼性が増し商品価値も上がるということをご教示いただきました。何よりも、私たちだけでは思いつかなかった発想、視点でのご提案をいただき、これまで考えたことのない当社の可能性を明確にすることができたのも副業社員のおかげです。

 

猫の飼育数が多い海外、進出への足がかり

何が副業社員の方と接点を持って、1番の収穫でしたか

 事業計画は5年先を見据えており、副業社員とお仕事をしている中て将来の海外進出の可能性も少しずつ見え始めました。猫の飼育数はアメリカと中国が世界トップで、5000万匹。日本も新型コロナウイルス情勢下で在宅時間が増え、犬よりも猫の飼育数が上回っていますが、猫の飼育数は世界的に見て8位か9位くらい。海外の方がより猫の飼育数が多いのが実状です。そのような情報をベースに副業社員が培ってきた海外でのマーケティング経験を活かすことで、弊社の技術やサービスが通用し得ること、販路開拓の余地があることを確信し、自信につながったのは大きなポイントです。                    

 

今後、会社としてどのように成長していきたいですか

 猫部屋リフォーム事業を成長させる、猫との暮らしをより快適に顧客に喜んでいただくこと。それはもう経営者として大前提の目標ですが、私としては大工職人衆が技術を継承していくことがなにより大切です。まだまだ技術を活かせる高齢の職人さんが研鑽を積んで活躍できるようであってほしい。猫部屋のリフォームはあくまでも結果論と捉えています。私もベテランの職人さんに育てられた身のため、組織として、経営者として、職人衆に貢献したいと考えています。

 

まだ副業社員を活用したことのない企業に向けてメッセージをお願いします

 副業社員の方に来ていただくのであれば「良い情報を与えてくれてありがとう」というスタンスでお話を聞くことが大切です。職人さんも同様ですが、お金を払えばこうしてくれるだろう、という受け身での期待をしないこと。限定的、暫定的に助言やアドバイスをいただくのであれば「こちらから、ひとつでも多く学ぼう」「この人材から様々な情報を得よう」という姿勢で一緒にお仕事ができれば、良い人間関係が構築できるのではないでしょうか。自身も、企業も成長していくために、ぜひこの機会を利用してみてほしいと思います。