山陰と山陽・関西を結び、緑豊かな中国山脈の中を走る智頭線を運営。歴史や文化の薫る観光名所がたくさんある地域を走り、新しい時代をひらく地方主要幹線として、また愛され親しまれる生活路線としての役割を担う。

各職種に正当な人事評価制度の構築 

副業社員を募集したきっかけを教えてください。

鳥取県立鳥取ハローワークからご紹介いただき、このマッチングの取り組みについて知りました。当社だけでは進めていけないことを、専門的な知識がある方にお話をうかがいながら進めていければと思いました。

 当時は、人事評価制度がうまく機能できていないことが課題でした。社員80名程度の小さな鉄道会社ですが、乗務員や車両関係、施設や線路・車両保守、それ以外にも総務や営業など、職種は多岐に渡ります。各職種を平等に評価する人事評価制度の運用が難しいものでした。特に社員から不満が上がったということではありませんが、社員のモチベーションをどう奮起させるかに課題意識がありました。人事評価を評価ポイントとして数値化して定めたのが6~7年ほど前です。今後はより社員に伝わりやすい、やる気につながる人事評価制度の構築と、評価する側である幹部職員への研修も必要だと思い、専門的知見のある副業社員にお力添えをお願いしたいと考えました。

資格を有し鉄道業界に精通した人材を厳選   

副業社員を募集してみてどのような反応がありましたか

 32名もの応募があり、その反響の多さに驚きました。応募者は30代から60代くらいまで年齢層も幅広く、大企業に勤められている方や個人事業主の方など様々でした。応募者の情報から絞って、6名の方とWEB面談をし、最終的にこの方にご相談したいという方おひとりとマッチングしました。「とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点」と相談し、6名と面談することに決めました。やはりたくさんの方からご応募いただいたので、面談もひとりではなく複数の方とお話をしたほうがよいと思いました。

 

その副業社員に決めた理由は

 マッチングしたのは40代後半の男性でした。関西の企業にお勤めされている方で、中小企業診断士の資格をお持ちであったこと、智頭急行以外にもこの副業社員マッチングの取り組みでの実績がある方だったことが心強かったです。

 当社の選考基準としては、まず鉄道業界もしくは関連業界の経験があること。関西・中国地方に知見があること、あとは経歴や人事評価に関する実績で検討しました。6名の方と役員を含めたWEB面談をして決め手となったのは、マッチングした方が最もお話の合う方だったからです。一方的なアピールではなく、当社の話もずいぶん聞いてくださり「この方なら一緒にできそうだ」と感じました。

評価側である幹部の士気が社員へ影響

具体的な業務内容とその成果を教えてください

 昨年の秋から副業社員に入っていただき、4か月間ほど、月に1回くらいの打ち合わせを重ねてきました。来社していただいたり、オンラインで話したり、それ以外にもメールで連絡を取り合っていました。「人事評価制度の具体的な再構築」と「幹部社員のモチベーション向上」について検討する必要がありました。

 

副業社員が方針を提示し幹部社員の士気を高める

 まず、幹部社員のモチベーションについて検討すべきと判断したのは、評価する側である上司の士気が他の社員へと展開していくと判断したためです。それが人事考課、人事評価へとつながります。副業社員にはまずこの方針を明らかにして、各課長が意見を出しやすいようにリードしていただきました。各課長がそれぞれ、モチベーションをあげるための具体策を考えていき、どう進めるかを検討しています。特に、課を越えての話し合いというのは非常に貴重で、別の課から何を評価されたらモチベーションになるのかなど、今までは知り得なかったものでした。副業社員が引き出してくださったと思っています。

 

各課長と面談後に全員での対話

 当社には課長職が5名います。副業社員は、WEBで各課長と話してくださり、そのあと2回来社して課長を集めて、いろんな話をしていただきました。特に印象的だったテーマは「他者が自分をどうみているか」という内容で、課長同士が改めてどんなところが良いか、どうしたほうがより良いのかという意見を出し合いました。課長同士で良いところを言い合う機会はまったくなかったので、とても新鮮でした。現在は出し合った意見をもとに、どう進めるか各課長が取り組んでいっているところです。

 

人事評価制度の整理

 幹部社員のモチベーションが、人事評価制度に影響することを踏まえた上で、副業社員のご助言で人事評価の具体案についても考え始めています。社員80名の小規模とはいえ職種が多く、なにがその職種にとって評価になるのかを改めて整理する機会になりました。例えば運転士なら、無事故が当たり前と思うのか、それをプラスの評価にするのか。また評価面談をする際も、どう社員に伝えていくのかで相手の気持ちも変わってくる。こういったことにも気づかせていただき、具体案を練っています。

 

副業社員がもたらした効果はどのようなものがありますか

 副業社員という第三者に入ってもらったことで、そこを切り口に会議の中で意見出しも活発になりました。課長同士がどう変わっていくかを客観的に見て意見交換し、それぞれがプラスになるような意識に変わりました。

 正直なところ、副業社員の募集をした段階で、副業社員に人事評価制度を作ってもらおうと思っていたところがありました。けれど実際はそうではなく、制度は自分たちで作るものなのだと理解しました。そのためのご助言やご提案を副業社員にたくさんしていただき、話が前に進んだだけでなく社内の雰囲気もよくなりました。当初はこの春から新しい人事評価制度にしようと考えていましたが、じっくりと取り組んで来年度中に形にしたいと思っています。副業社員にも継続して相談しており、評価する側の気持ちと、評価される側の気持ちの両面をよく考慮して進めたいと思います。

切磋琢磨で若い社員にも役職の機会を

今後、会社としてどのように成長していきたいですか

 当社は、今までは役職に就く社員は勤続年数が長い社員ばかりでした。人事評価制度を充実させ、若い社員でも役職つけるようにしたいというのがひとつの目標です。業務に積極的に取り組めない社員は改善を促し、評価をモチベーションにつなげて離職を避けられるようにしたいです。がんばっている社員には明確な基準をもとに評価したり責任あるポジションについてもらったり、さらに良い給与が得られるようにして、良い意味で社員が競争できる会社にしたいです。

 鉄道会社としては、新型コロナウイルス情勢下で落ち込んだお客様を、どう鉄道利用に呼び込むかというところはこの先も課題になります。自治体や他の鉄道会社と協力しながら、コロナ情勢前のように利用客が増えるような施策を考え、智頭急行という鉄道を維持していきたいです。

 

まだ副業社員を活用したことのない企業に向けてメッセージをお願いします

 副業社員には、社内とは違う目線でいろんな話をしていただけることが魅力です。なにをどう変えていったらいいのか、その方法が分からないという状況で、選択肢のひとつとしてこの副業人材マッチングを利用するのは有意義です。今回副業社員を活用し、当社の各課長もモチベーションが上がり、より良い企業にするため実行していくという意識が芽生えました。変えていく第一歩として、当事業を活用したらよいと思います。