1946年創業、鳥取県倉吉市にて「木のぬくもりと木の調和」をモットーに、木材の製材および販売、賃挽製材や建材販売などを行う。原木の仕入れ・製材・加工・販売までを一貫して行っており、一般住宅から公共物件など様々な場所に納品。JAS認証工場であり、地域の山とお客様をつなぐ役割を果たしている。

大量生産ではなく受注生産の強みを活かすために

副業社員を募集したきっかけと当時の経営課題は何ですか

 知人の企業がこの副業社員のマッチング事業を活用していて、当社も興味がありました。課題として、個人向けの商品開発に悩んでおり、「とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点」のサポートも受けられたため、まずはやってみようという気持ちで利用しました。

 

 当社は住宅用の木材をメインに扱っており、仕入れから、製材、乾燥、納品までを一括して行っています。原木を仕入れて工務店に卸すことが多いですが、製材もしているので工務店や個人のお客様が求める寸法、数量に柔軟に幅広く対応できるところが強みです。製材の商流は昔から変わっていませんが、価格競争なども含め、近年は機械化されたやり方で大量生産された流通材に押されている傾向です。この先数十年を見据え、今と同じように事業が続けられるかと考えたときに、販売ターゲット層とその販路を考える必要がありました。自社でまだ開拓できていないのは個人の消費者であるため、個人向け商品の販売ができないかと考えました。無料のECサイト作成プラットフォームを使ってネットショップは途中まで作成できましたが、弊社には肝心の運営ノウハウが不足していました。例えば、どのような商品を作り、送料はいくらにすべきか、閲覧数を増やすにはどうしたらよいかなど、助言をしてくれる人が必要でした。

消費者目線での提案が可能な優秀な副業社員との出会い

副業社員を募集してみてどのような反応がありましたか

 「ECサイトの立ち上げ」と「商品開発」の2求人で副業社員を募集し、それぞれ15~20件程度の応募がありました。反響が大きかったことにまず驚きました。応募者は20~30代の若手を中心に50代までの応募があり、大手企業のクリエイターの方や、独立して大きな実績を持たれている方など、スキルや経歴など優秀な方が多く驚きました。

 

2名の方を副業社員に決めた理由は

 「ECサイト立ち上げ」の求人に関しては、大手のIT企業に現職で勤められている方とマッチングをしました。ニュースサイトやショッピングサイトへの誘導や、全体的な進行管理の責任者だった方です。「商品開発」の求人は、メーカーに長く勤められている方とマッチングをし、こちらは商品デザインの経験がある方でした。いずれも当社が必要とするスキルをお持ちの方です。たくさんの方と面接をしてきましたが、このお二人は「実際にこうやったらもっと良くなると思う」とユーザー目線で具体的な提案をしてくださったこと、そして木材の業界に挑戦したいという意欲があったことが採用の決め手になりました。

新規顧客層への販路構築と企画開発

具体的な業務内容とその成果を教えてください

 副業社員の方とご一緒して4か月ほどになります。オンラインで月に1~2回面談し、次回までの課題をお互いに持ち帰り、次の面談で話して進めています。現状、全体目標の3割くらいまで進んでいます。

 

 ECサイトは方向性が決まり、商品を掲載して公開、決済できるところまで具体的にプロジェクトが進みました。ただ、サイトの公開がゴールではありません。トップページの導線や全体的なデザインも、これからさらに詰めていく方向で進めています。1年後くらいに理想のECサイトを完成させ、商品を掲載し、個人のお客様に届くようにすることをゴールに見据えています。その後もサイトを育て、当社の製材事業をカバーできるくらいの柱として継続させることが目標です。将来的には、地域の木工作家さんの商品も扱えるようにして、地元の職人さんの活性化にもつなげたいです。

 

 商品開発に関しては、「端材を使って何か作れないか? 」と相談し、新商品をご提案いただいています。現在、商品のアイデアは形になり、鳥取県内だけでなく、ほかの地域の人の目にも留まる商品パッケージのアイデアを詰めているところです。私たちは製材業が長いですが、まったく関係のない方だからこその視点でご提案してもらっています。斬新なアイデアで、私たちも将来販売することにワクワクしています。

 

副業社員がもたらした効果は

 副業社員とのお話は本当に刺激になるので、自分の中で「こういうことってできるのかな」と眠っていたアイデアがどんどん出てきます。以前ならそれだけで終わってしまっていたところを、副業社員の方に受け止めていただけるのが大きいです。第三者目線で見てもらい、聞いてもらい、「こうすれば実現できるよ」と前向きに、さらに具体的に背中を押してくれました。社内にも副業社員を利用することは周知していて、スタッフにも刺激になっているようで、社員からアイデアも出てきています。

今後、会社としてどのように成長していきたいですか

 副業社員の方々とご一緒して、やりたいことが具現化してきました。ECサイトに関しては、商品以外の情報、例えば「木材を使ったDIYのやり方」など、これからDIYに取り組みたい人への情報も発信していく予定です。

 当社は農林水産省のJAS認証工場を有していますが、大量生産・大量消費ではなく、木を余すことなく使い、SDGsに貢献していきたいと考えています。木を地産地消し、端材やおがくずなども含め、1本の木を全て有効に使えるようにしていく。そのほうが、安いからという理由で大量に遠方から運ぶよりも、資材のロスも抑えられ環境に貢献できます。今後、当社の情報や商品をしっかりと発信し消費者へ商品を届けることが目標です。

 

まだ副業社員を活用したことのない企業に向けてメッセージをお願いします

 副業社員を活用すると、自分たちにはないアイデアを多くもらえます。1番ありがたいのは、自社と一緒に関わっていただくことで、自分自身も新しい視点を得て成長できているところです。副業社員の方と一緒に取り組むなら、自分もアイデアをどんどん出して、どんな反応をもらえるか試しながらやっていくことが大切です。なにか挑戦したいけど踏み出せない、どうしたらいいのか分からないときは、まずは気軽に怖がらずに副業社員を活用してみれば良いと思います。地域内で、自分たちだけで完結させるのではなく、自分たちにはない発想を持った方々にお願いすると視野が広がります。