平成15年1月にNPO法人れしーぶを設立後、平成22年社会福祉法人を取得し、約20年にわたり高齢・障がい・地域福祉の通所・入居事業10施設を運営。利用者が地域社会において個人の尊厳を保持しつつ、自立した日常生活を営むことができるよう支援している。

働く社員を幸福にする、人事制度構築を目指して      

副業社員を募集したきっかけを教えてください

 慢性的な人手不足を解決すること、そのための人事制度構築が懸念事項でした。福祉サービスのニーズ増加に対し、人材の人数が追いついていない点が、大きな課題としてありました。「人事評価の公平性が見えない」「仕事の意義が見いだせない」「給与などの条件面でスタッフが離職してしまうケースが多いこと」など多くの形で、課題が表れていました。

 そのような時に、「とっとりプロフェッショナル人材戦略拠点」から本事業の案内をもらい、当事業について知りました。国内の大手企業の優秀な人材と出会える可能性が高い上に、コストがかなり低額で済むというところに驚き、活用したいと考えました。副業社員とのマッチングを通じて、当法人の問題を解決し、スタッフの幸福度や生活の質を上げていくことを本気で取り組むことを決めました。

多彩な応募者から50名を超える反響   

副業社員を募集してみてどのような反応がありましたか

 今回、『事業戦略』と『人事制度』の2つで募集をしました。『事業戦略』については18名、『人事制度』は14名、合わせて32名の応募があり、反響にとにかく驚きました。応募者は、コンサルティングや人事にかかわっている方、経営者など多岐に渡りました。応募のデータから絞って20代~60代までの10名以上と面談をしましたが、年齢が若い方だと、革新的なアイデアが魅力で、年齢層の高い方だと、制度の構築など知識や経験が見込まれました。最終的には2名採用しました。

 

その副業社員の方に決めた理由は

 10名以上面談をし、当法人の「理念」に共感してもらえるかどうか、助言が会社目線か社員目線か、部分的なことだけでなく全体最適の広い視野で考えられるか、というところを基準に採用しました。

 

 『人事制度』をお願いした副業社員は、500名規模のインフラ系会社で人事部を務めている30代後半の男性で、前々職で福祉職のご経験もあるということが決め手になりました。福祉職をしていた頃から、ご自身も福祉の現場の人事制度をどうにかできないかという課題感があったそうで、社会保険労務士事務所に勤め、人事を学んだとのことでした。

 

 『新規事業戦略』をお願いした副業社員は、前職メディア業界にいた40代の男性で、事業入り口の戦略を広げる視点がありそうだということでマッチングに至りました。ご自身が病気をされたことがあり、看護や医療、福祉施設に関心を持たれていたそうで、ご自身のできるかたちで恩返しをしたいと言っておられる情熱に惹かれ、ご縁を持ちました。

未来を中長期で描くことで、社員も成長することに気付いた

具体的な業務内容とその成果を教えてください

団結力から長期目線で描く構想

 『人事制度』を担当している副業社員は、お住まいの静岡県から鳥取県まで来てくださり、直接お会いすることでとてもやりやすくなりました。福祉サービスにおいての理念や存在意義をきちんと再定義していただいたことで、当社としての意見が固まって思いが一致しました。やはり、こういった団結力は実際に対面だからこそ固まるものだと思います。

 現在は、副業社員に若手スタッフ2名を合わせた、主に4名で課題に取り組んでいます。全社的なことなので、全員で会議の場を設け進捗を共有していますが、私だけではなく、若手スタッフ2名にとっても良い刺激になっています。

 

中長期を見据えての伴走

 『人事制度』について、完成形から比較すると、まだ序盤の段階です。ただ、人事制度は1年単位の中期、長期的に見る必要があるものだと目線を合わせた上で、一緒に作り上げています。現在は、サービスの理念・存在定義を再定義し、課題解決に向けて現在制度を練り上げているところです。

 『新規事業戦略』に関しても現在2週間に1回くらいの頻度で、オンラインで話を進めており、こちらも長い期間を想定し双方で準備を進めながら、互いの宿題を共有しながら進めているところです。

 

 10年先を見据えた経営体制の明示 

 『新規事業戦略』を担当している副業社員は、大企業で経営戦略室での経験があり、経営戦略の考え方や事業の考え方、数字の捉え方というものを具体的に助言してくれています。経営者として、5年、10年先の会社の数字をどう計画し体制を整えていくか。ゆくゆく経営に携わり、先代からの企業を続け、従業員を守っていくことに悩んでいたので、今後の方針がある程度自分の頭の中でクリアになったところは非常に大きいです。また、その上で、この年度内に実行していく具体的な計画も立てることができました。

 

副業社員がもたらした効果はどのようなものがありますか

とにかく当法人としては気づき、学びの連続でした。視野の広さが私たちとは全く違う。鳥取という地方の事業者の私たちが、都会の方の目線で話をしていただき様々な気づきがありました。『人事制度』に関しては具体的な理念・存在定義の再考まで進み、スタッフが長く安心して働けるための具体案が固まりつつあります。人手不足の問題を解消するための優先順位として高いところなので、ここに焦点を当てて詰めていけたのは当法人としてもかなり大きな前進です。

今後、会社としてどのように成長していきたいですか

 今回、副業社員の方々と共に課題解決に取り組む中で、事業ありきでなく、この鳥取という地域から求められる事業者でありたいと強く思うようになりました。地域から求められる課題を発掘することで、課題へアプローチできる人材が育ち、企業全体が育つものだと感じました。そこに当法人の理念がありますし、スタッフにもそういう人材であってほしいと考えています。

 

まだ副業社員を活用したことのない企業に向けてメッセージをお願いします

 当事業の最大のメリットは、優秀な人材に月3万円からという報酬額で仕事をお願いできることです。大手企業の方や、素晴らしい経歴のコンサルティングをこの金額で頼むことは普通ならまずできないことです。副業社員にお願いするなら、つながったご縁を大事にした方がいいと思います。

 

 もちろんマッチング後の相性はありますので、企業の視点でどうやっていくか自分たちの目的や方向性を見失わないことが大切です。自分の利益、会社の利益、社員の利益を大事に考え、企業の価値を高めていくこと。副業人材プロジェクトの取り組みをうまく活用すれば、それが可能になります。