きくらげの生産・販売を中心に行う。日本で流通している木耳は殆どが中国産であり、純国産の木耳はわずか3%ほど。中国山地の地下水を使い、菌床から国産に拘った純国産のきくらげを生産・販売している。

コロナによる消費量の減少に打開策を打ちたかった

副業人材を募集したきっかけを教えてください

 大手外食チェーン店への提供が中心だったこともあり、新型コロナウイルスによる時短営業・営業自粛の影響を受け、きくらげの消費量が減少していました。この状況を打開するには新しい販路を開拓する必要がありましたが、市場分析や有効な販売手法に対する知見やノウハウが乏しく、専属スタッフもいない状態でした。そんな中で今回のお話をいただき、自分たちが持っていない情報を外から得られるのであれば活用してみたいという想いから、副業人材の募集を決めました。

 

実際に顔を合わせられたことが、安心につながった

当時の応募状況に関する率直な感想を教えてください

 遠方の方からの応募が多いのかなという印象がありましたが、意外と鳥取周辺の県にお住いの方からの応募もあって驚きました。きくらげの事を好きな方も多く、素直に嬉しかったです。想像以上の応募があったため、正直なところ選考は悩みましたが、きくらげに興味を持っていただいている方を優先的に面談しようという話になり、選考を進めていきました。

 

選考ではどのようなポイントを決め手にされましたか

 これから一緒にプロジェクトを進めていく相手を選ぶなら、何でも話せる方が良いだろうと思い、信頼できる方かどうかに重きを置いていました。面談後に関係者で話し合った結果、気が合いそうと感じた方が一致していたため、その方にお願いすることを決めました。実際にお会いできる距離で働かれていて、鳥取に関する知識をお持ちだったことも大きかったかもしれません。

 

想定外の出来事にも、柔軟に対応

今回のプロジェクトでは、どのような取り組みを行いましたか

 当初は「マーケット調査」「販売手法」「販路開拓」の3つを相談する予定でしたが、気候の影響で生産が予定通りに進まないなどの問題が起き、生産計画の見直しを優先する必要が出てしまい、そこを中心に相談しました。きくらげの生産には天候が大きく影響します。特に冬の智頭町は寒く、ボイラーが欠かせません。でも、ここにかかる燃料費が高く、利益を上回ってしまう問題がありました。そのため、現在は冬の生産をストップしています。そうなると短い期間で効率的に生産を進めていき、ストック量を増やしていくことが重要でした。また、生産はオートマチックに進められる部分があっても、人の手が必要な部分は存在しているため、少ない人数でどう回すべきかという課題もありました。

 

生産計画を見直すうえで、具体的にどのような相談をされましたか

 副業人材と相談した結果、実際に現地まで足を運んでいただき、生産現場の実状や決算情報などを包み隠さず全てお見せしました。そのうえで2022年4月からの生産に向けて、どのような部分を改善すべきか等を話し合っています。電話やLINEを使って連絡を取りながら、何度か対面での打ち合わせもして、内容を詰めていきました。

 

新しい価値を考える機会に

プロジェクトの成果、あるいはスタート後の変化について教えてください

 まだ成果には結びついていないものの、副業人材から見た現場の感想や販売手法に対する考え方などを聞く機会が得られたのは非常に大きかったと感じています。販路開拓においては具体的なイメージを持っていたわけではありませんが、今の規模感では生産量を増やすのは難しいため、単価を上げてでも価値を認めていただける顧客に絞ったほうがよいという、私たちにはない視点でのアドバイスもいただけました。条件に合致する企業様もすでに複数社ご紹介いただいており、オファーシートとサンプルを提出しています。商品に関しては冬の生産ストップや人的リソースを考慮して、長期保存できる乾燥きくらげを選べたことで、余裕をもった生産ができると考えています。

 

思ったことを素直に言える関係性

実際に副業人材と働いてみて、活用をどのように感じましたか

 ざっくばらんに話せていることは、非常にありがたいです。従業員だと同じように話すのは難しいのではないでしょうか。良い意味で対等な関係が築けていると思います。また、実際にお会いできたのが良かったです。遠隔でのやり取りも技術的にはできますが、やはり対面で話せたからこそ、これだけの信頼感が生まれたのだと思います。

 

副業人材の活用を検討されている方にアドバイスはありますか

 内部事情を話して、協力してプロジェクトを進めるのが重要になりますが、信頼関係を築くのが重要なポイントだと思います。私たちは出会いの運に恵まれ、結果的に相性の判断もできていましたが、ビデオ通話での面接だと分からないことも多いです。しかし、信頼できる副業人材と出会えたなら、これほど頼もしい存在はいません。

 

副業人材にもお話を伺いました

本プロジェクトに応募された背景を教えてください

 もともと食品関連の仕事をしていて、扱っているジャンルが一緒だったことで興味を持ちました。現職ではチームのマネジメントをしており、営業戦略の立案、数値管理、目標設定などを担当しています。今回の募集を見たとき、自分自身の経験と照らし合わせて、「もしかしたら自分でも役に立てるのではないか」と感じたのが応募のきっかけになります。

 

実際に業務を進める中で、工夫された点を教えてください

 生産計画については書類上だと分からないことも多いため、生産現場を直接見たいと感じ、実際に現地まで見に行きました。そこできくらげの生産が思ったより奥深く、量を増やせば利益が増えるという方程式が当てはまらないことを知れたのは良い収穫だったと思います。この部分をストロングポイントとして考えられないかと、生産計画や販売計画のアイデアを出していきました。

 

 従来では薄利多売という考え方が一般的かと思いますが、現場の生産体制やチェーン店への提供量を考えると、数を増やすのは難しい状況でした。であれば、厚利少売になったとしても価値を感じていただける企業の選定と魅力の伝え方が重要だと考えました。付加価値をどうつけるか、定期購買にどうつなげるかなど、まだ課題は多いですが、多角的に販売計画を考えられているのは、私にとっても大変ありがたい経験だと感じています。

 

ご自身のキャリアについて、副業がプラスに働くと感じるポイントはありますか

 都会とはまた違う、地域ならではの可能性を感じました。都会での販路拡大といえば、純粋に生産量を増やしての販売になるかと思いますが、今回はその考え方が通用しませんでした。そのため、生産効率をどう高めていくか、今ある商品の魅力をより引き出すにはどう伝えるべきかなど、普段とは違う発想が必要で、とても良い刺激になったと感じています。まだプロジェクトは続いているので、より良いご縁が生まれるように支援していきたいと思います。