2009年に中国・四国・九州初の本格的森のようちえん『智頭町森のようちえん まるたんぼう』を開設。預かり保育型施設「まるたんぼう」、共同保育型施設「すぎぼっくり」運営、フリースクール「新田サドベリースクール」運営ほか、シェアハウス事業も展開。

競合との差別化と広報で認知拡大を図る 

副業社員を募集したきっかけと当時の経営課題は何ですか

 当法人と運営する保育施設の認知拡大するため、広報と他施設との差別化を図るブランディングが課題でした。もともと立ち上げた私が「森林」について学び、また3人の子育て経験もあったからこそ、自然の中で保育することのポテンシャルを確信して設立した保育施設。自然を「園舎」とみたて、自らなにをしたいか考えられる子を育てる当法人の保育施設は、保育業界ではそれなりに知名度がありました。

 初めて開園した当初はまだ『森のようちえん』というのは珍しかったですし、うちの保育施設がいいと言って県外から移住してきて下さる方もいます。鳥取県が補助金を出す制度も整えてくれたこともあり、現在は当法人のほかにも自然環境を活かした保育施設が県内に10園ほどもあります。当法人はそれまでテレビや映画でも取り上げられたりして関心を持つ方が多かった一方、自分たちで発信していくことに課題がありました。私たちでは他園との差別化をするための広報スキルや知見が不足しているので、外部の人材にお願いをしたいと思い、当事業を利用しました。

30名超の反響が手ごたえと自信に 

副業社員を募集してみてどのような反応がありましたか

 副業社員を募集し、36人ほどの多数の応募があり驚きました。たまたま園児の確保に悩んだり、運営上のことで苦戦したりという時期で自信をなくしかけていたのですが、これは望外の喜びでした。本当に様々な経歴の方ばかりで、応募者の情報を見るだけでもわくわくしました。鳥取に貢献したい、挑戦したいというモチベーションの高い方が多く、私たちも勇気づけられる心地でした。その中から7名の方と面談をして、最終的にお一人とマッチングできました。

 

その副業社員の方に決めた理由は

 マッチングした副業社員は30代前半の男性でした。長くメディア業界にいた方で、新聞記者8年、雑誌編集者3年のほか、15年ほどテレビ局関連の経験がある方でした。広報やブランディングを考えるならインナーマーケティング、つまり組織内部を整えていかないといけないということ、まさに私たちの課題とするところを話してくださったことが決め手となりました。もともと祖父母が鳥取の方で、鳥取県のためになることがしたい、最近は子ども食堂の活動にもかかわっていたので子どもに関わりたいことも大きかったです。

明らかにされたインナーマーケティングの重要性

具体的な業務内容とその成果を教えてください

 副業社員には昨年10月中旬から入っていただき、今4か月くらい伴走していただいています。2週間に1回ほどオンラインで打ち合わせをしていますが、現地にも既に2回ほど来てくださっています。

 

アンケートで全スタッフの現状を抽出

 まず広報をする前段階としてのブランディングやインナーマーケティングが必要でした。組織内の方向性を整えるということです。副業社員の方は全てのスタッフにアンケートをとり、どんなところにやりがいがあるのか、どんなところにやりにくさがあるのかなどを調査してくれました。普段私たちだけではなかなか意見が言いづらいこともありますし、逆に良いところを出し合う機会もありません。そこを第三者である副業社員の方に行っていただけたことが助かりました。

 

各セクション責任者からヒアリング

 当法人には3つの大きなセクションがあります。副業社員の方はそれぞれの責任者にインタビューをして、各セクションの現状や責任者の声を拾い上げてくれました。来年度に向けての計画案がいくつかあり、当法人外との別件のプロジェクトも急遽入ってきたタイミングで、責任者の意見をもとに副業社員の方が指針を明確にしてくれました。

 こちらのプロジェクトと組むほうが、当法人の世界観やブランディングにミスマッチがないということも明らかにしていただきました。これは初の試みとして、今まで関係者へ出していた年賀状を、デジタルの会報誌にし、一緒に年末年始のご挨拶として各責任者のインタビューも掲載しました。こうすることで各責任者のモチベーションを上げることを目指しました。この会報誌制作も副業社員にお願いし、読んだ方からは好評をいただいています。

 

世界観を表す公式サイトの整備

 当法人の公式サイトの整備を副業社員の方にお願いしました。サイトを覗きに来た人に、当法人の世界観、私たちが伝えたいことをうまく伝えられるようなサイトに変えていきたいと思っていたのですが、私たち自身では手が回りきっていなかったのが現状でした。スタッフのアンケート調査や各責任者へのインタビューも踏まえ、当法人が大切にしていることが閲覧者に伝わるようなサイトに変わってきています。今後はスタッフの声も公式サイト上に掲載しようと動いています。

 

副業社員がもたらした効果はどのようなものがありましたか

 副業社員募集の段階では、広報とブランディングが必要と感じていました。しかし、実際にはそうしていくためのインナーマーケティングの方がむしろ大事だと感じました。内部のスタッフとのコミュニケーションのあり方や、目指すべきものの共有などを副業社員に提案していただきました。そこに力を入れることが結果的に、広報やブランディングにつながるのだということを実感しました。これは副業社員がいなければわからなかったことです。

 当法人のスタッフもモチベーションが高く、想いが強いということも再認識できました。副業社員に入ってもらうことでそれがわかり、相談もできて本当に心強かったです。法人内での意識も高まり、3月に対面で副業社員の方も交えて、来年度のスローガンや新規事業について話し合う予定です。