業務用の酒屋として、日本酒、焼酎、ワイン、洋酒、食品の卸・販売をメインに事業を展開。その豊富な商品ラインナップを活かして、巣ごもり需要が高まる家庭用市場への参入を目指して、ECサイトの立ち上げに取り組む。

ECサイトを活用して、家庭用市場に挑戦

副業人材を募集したきっかけを教えてください

 これまでは業務用の酒屋として、飲食店、旅館、宿泊施設などに商品を卸していました。しかし、新型コロナウイルスの影響によって、顧客の店舗が時短・営業自粛といった対応を取らざるを得ない状況になったことで、自然と発注量が減っていました。業務用の卸が売り上げの9割を占める当社にとっては痛い打撃です。何か打開策はないかと知恵を絞った結果、巣ごもり需要が増しているという情報から、ECサイトを作ることで、家庭用市場で売り上げを立てることができるのではないかと感じたのがきっかけです。

 

実際に募集してみると、嬉しい誤算が続いた

当時の応募状況について率直な感想を教えてください

 正直なところ、応募は4~5件だろうと思っていたので、想像以上に応募が来て驚きました。しかも経歴を見ると優秀な方が多く、選ぶのには悩みました。私たちがECサイトの立ち上げを経験したことがなかったため、立ち上げの経験をお持ちの方を中心に面接を実施しました。

 

選考ではどのようなポイントを決め手にされましたか

 ありがたいことにプロジェクトをお願いしたいと思える方が2名もいて、どちらを選ぶかで迷いました。社員や役員を含めて5~6名で選考したのですが、プロジェクトメンバーと世代が近い方のほうが気兼ねなく話せるのではないかという意見が出て、よりメンバーと年齢が近い方を選ばせていただきました。

 

鳥取ならではのお酒がアピールできるサイトを目指した

幅広い販売チャネルがある中で、どのようなECサイトをイメージされていましたか

 結論としては、自社サイトでの構築を選びました。Amazonや楽天など、いわゆるモール型ECへの出店は正直考えていなかったです。ユーザーの数こそ圧倒的だと思いますが、価格勝負になる懸念があり、私たちには難しいと感じました。また、ShopifyやBASEなどのASPカートも候補としてはありましたが、周囲からカスタマイズが難しいと聞いており、手が出しにくい印象でした。

 

 自社サイトにこだわった理由としては、コーポレートサイトのリニューアルを検討していた点が大きいです。当時のコーポレートサイトは20年・30年ほど前のもので、スマホ対応が出来ていませんでした。そのため、今回のプロジェクトを通じてコーポレートサイト合体型を作ったほうが、ユーザーに対して当社の想いや商品のストーリーを見せやすいのではないかと考えました。

 

ECサイトのペルソナについては、具体的にどのようなターゲット像を設定されましたか

 ペルソナ設計に関しては、副業人材の方からも非常に大事だと教えていただきました。デモグラフィックの部分は30代~40代の独身男性をすぐに思い浮かべることができましたが、価値観やライフスタイル、購買動機といったサイコグラフィックをイメージするのは大変でした。鳥取のお酒をわざわざ買うような人なら、意外と料理もするだろうとか、度数などのスペックにもこだわるだろうから、説明は分かりやすく載せたほうが良いとか、エンドユーザーの気持ちを考えることで、ECサイトに載せるべき情報が少しずつ明確になっていきました。

お酒ごとのストーリーを大切にしていきたい

自社サイトの制作は、どこまで進みましたか

 現在(2021年12月時点)は制作会社が決まって、サイトの構成やデザインを固めているところです。サイトマップに関してはどのページを作って、何を載せるべきかという知識がなかったため、副業人材にアイデアをいただきながら進められたのはありがたかったです。商品紹介ページ、ランキング掲載、特集ページなどの実装が決まっています。今回はスケジュールの余裕がなかったため、日本酒を中心とした商品ページになりますが、ラインナップは今後どんどん増やしていく予定です。

 

サイト制作について、注力したいポイントはありますか

 打ち合わせ段階ではありますが、お酒に関するストーリーはこだわりたいと考えています。当社のサイトにわざわざ訪れてくださるユーザー様は、きっとお酒に関しても強いこだわりがあると感じています。だからこそ、お酒のスペックだけを記載するのではなく、どのような蔵がどのような想いで造っているかというストーリーの描き方を大事に作っていきたいです。それが結果的に顧客体験の違いになり、競合他社との差別化にもつながると考えています。

 

その他、プロジェクトを通じて始めたことはありますか

 商品を紹介する場として、Instagramの運用を始めました。まだ開始直後ではありますが、すでに200名以上のフォロワーを獲得しています。今後はこのアカウントを通じて、お酒に関わる情報を発信していく予定です。

 

副業人材は、自社に足りない部分を補ってくれる存在

実際に副業人材と働かれてみて、副業人材の活用をどのように感じましたか

 プロジェクトを進めていくという意味では、良いパートナーと出会えたと感じました。この話がなければ、業者に直接依頼するかたちになっていたと思いますが、その場合は業者に依存したプロジェクト進行になっていたと思います。副業人材はこちらの事情をくみ取りながら、譲るべきでないところをきちんと線引きしてプロジェクトを主導し、リスク回避に関しても積極的にアドバイスしてくださっています。ECサイト立ち上げに関する知識が乏しかった当社にとって、非常にありがたい存在です。

 

副業人材の活用を検討されている方にアドバイスはありますか

 やはり距離感が重要だと考えています。特に副業人材とのコミュニケーション頻度に関しては、高すぎると他力本願になってしまう可能性がありました。そのため、私たちは週1回の定例会議で進捗を確認し、来週までの宿題を出し合うようにして、任せっきりにならない関係構築を心掛けています。個人的な感覚としても、週1回ぐらいがちょうどよいですね。

 

お得意先の企業も巻き込んで、良質なお酒体験を届けたい

今回のプロジェクトを通じて、これから試したいと感じたことや、実際取り組まれていることはありますか

 ECサイトが立ち上がって、一定の売り上げが出せるようになったら、取引先の企業様との連携も視野に入れています。お得意先には酒粕やおつまみや燻製醤油など、お酒に関連する商品を強みとしている企業が沢山いらっしゃいます。そういった企業と協業することで、お酒を通じて得られる体験価値をより一層高められると考えています。また、今後はInstagramを使ったプロモーションも検討していて、幅広い方にECサイトを知ってもらうための取り組みを強化していく予定です。Instagramはまだ運用が始まったばかりなので、写真やタグ付けに関しても研究しながら、副業人材と一緒に進めていけたらと考えています。